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早稲田と慶応 名門私大の栄光と影 (講談社現代新書)

『本気で早稲田と慶応について知りたいなら読んでも無駄。』
大学生協で平積みしてあったので購入した。結構売れているみたいだ。しかし、よく売れているという本は、内容が薄っぺらい可能性が高い。老若男女にうけるということは、深い知識を必要としないことを意味するだろう。

まず、筆者は『格差社会 ?何が問題なのか?』という岩波新書を書いている人である。この本も読んだことがあって、そのときと同様に、議論の進め方やデータの読み取り方に関して結構不満な点が残った。

まず、早稲田と慶応の徹底解剖ではないという点があげられる。今の大学の中身を検証しているわけではなく、マスコミのランキング、有名人の数での比較が中心で、大学でどのようなカリキュラムで教えられているかについては触れられていない。一言で言えば、「早稲田と慶応はなぜ有名なのか」について、大隈重信と福沢諭吉の創設時の話を持ち出して、すごい歴史があるでしょ?と言っているに過ぎない。

分析・議論の方法も、納得いかないのが多かった。読者が知りたい今後の新しい試みの詳細について、情報が不足しているのに無理して書いている感じがある。まず、早稲田大学はよい教育を行おうとしているようであるという文脈で、以下のように述べている。「例えば、学部の垣根を越えたオープン科目、特定のテーマを少人数ゼミで勉強するテーマカレッジ、インターネットを駆使したオンデマンド教育、チュートリアルを中心にした英語教育、国際教養学部の創設、高度な職業人養成の大学院教育の拡充など、意欲ある教育への取り組みが紹介されている。これらの取り組みがどのように成功するのか、興味の持たれる点である。」また、慶応と早稲田の新しい政策の導入例として、「例えば慶応であれば、一貫教育の伝統を強化するために、新しい小学校の創設を計画している。早稲田であれば、慶応の一貫教育につづくための目的かどうかはわからないが、系列校の実業学校に初等部を創設した。さらに、国際教養学部を創設して、グローバル化の世界で役立つ人物の輩出を目的として、新しい教育方針を打ち出している。早慶両校は新しい方向性をめざしている。」と書いている。意欲ある教育の取り組みとか、新しい教育方針とか、具体的にどのような今日行く方針であって、どういったところに筆者が興味を持たれたのかが書かれていない。従って、大学のパンフレットを読むほうが遥かにましな比較ができるのである。

次に、『格差社会』でもそうであったが、数値の使い方が微妙である。びっくりしたところがあった。入試難易度を検証するために.1960年、1981年、2007年の模試における入学難易度の数値を比較しているが、1960年は得点、81年と07年は偏差値で比較している。ここで、慶応と同志社を比較しているのだが、以下のデータを参考して次のように述べている。

1960年 慶応大学 189点 早稲田大学 187点 関西学院大学 163点 同志社大学 147点
1981年 早稲田大学 67.7 慶応大学 66.4 上智大 63.3 同志社大 62.5
2007年 慶応大学・早稲田大学 66 上智大学 64 同志社大 62

「1960年にトップであった慶応は189点で、4位の同志社は147点で42点の差があった。しかし、2007年では慶応の偏差値が66、同志社が62であり、差が縮まっている。もとより、得点と偏差値の違いもあるので、単純に比較はできないが、相対的に見ても差の縮小は明白である。」単純に比較はできないが、相対的に見ても差の縮小は明白という部分に説明が欲しい。だって81年の差は3.9であり、07年の差は4ではないか。むしろ差が(微妙ではあるが)広がっているではないか。こじつけている印象がある。

また、この本の要旨が突拍子も無いと感じた。今後の大学教育の生き残り策としては、「学力の高くない学生が今後増えるから、学術専門教育ではなく,職業教育の場として大学はあるべきである。」と明言している。勉強したいがために大学を目指している人にはとんでもない話だ。読んでいていい気分はしない。っていうか、早稲田慶応に関係ないんじゃないか?

私的な話だが・・・といって、小樽商科大学や灘高校の話を持ち出したり、勤務先の同志社大学の様子を書いたりもしている。そんなの書くなよ。これ早慶に関する新書だろ?と思ってしまった。

早稲田慶応の学部について深く知りたいとか、早稲田と慶応のどちらのほうが研究実績があるのか、などは書かれていない。マスコミに出てきたランキングをもとに、表面的に比較しただけである。筆者は早稲田大学も慶応大学もでていないから、客観的な分析を行えたと思うと述べているが、逆に客観的すぎて「深さが足りない」と思う。随所に「?と議論してみた」と丁寧にも述べているが、議論になっていないと思う。

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